表紙の人形が脳男を物語っているようで読み終わった後納得してしまいます。
爆弾事件をきっかけに、ある人物が登場してきます。
入陶 大威(いりす たけきみ) 偽名 鈴木一郎
彼が脳男です。
彼は生まれた時より疾患を持って生まれてきてしまいます。通常は彼のような事例はありえないようですが、もしいたとすれば、スーパーコンピューターが一人の人間サイズに収まって服着て歩いてるようなことになります。
しかし、彼には情動が無いんですね。
心で感じることができない。普通なら心地よい風といったことは誰でもわかるけど、彼の場合熱くもなく寒くもない常温だとわかるだけ。
生まれた時から用を足すのも、食事を摂るのも、支持や命令がないとしなかったんです。
それが火事で大やけどをおおい、祖父を亡くしたことがきっかけとなり、 変わって行きます。
物語の中ではその部分はあまり詳しく書かれていませんが、気になるところです。
情動が乏しく知識があふれんばかりにあるので、行動、判断は的確。たとえ過程を間違えても、結果は出せる。仕事をまかせたら絶対安心なので、羨ましいとさえ思ってしまいます。
でも、彼がその能力を使うのは、人殺しなんですね。
一般人ではなく、極悪人ばかり。
作品内の主軸である爆弾事件も犯人を殺すために彼はやってきたんです。
そして見事に周りを欺き、達成してしまいます。
読み終わって切なくなる作品でした。
犯罪が彼の両親、祖父、自分の顔、すべてを奪い犯罪者を殺す日々。。。
寄り添うものもなく、ただ一人生きていく。
人は誰しもそうなりたくてなるというのは殆ど無く、ただ懸命に自分を生きているだけ。
彼のこれからに幸あらんことを願いたくなる小説でした。
脳男 (講談社文庫) 首藤 瓜於 講談社 2003-09-12 |
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