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2013年9月23日

エトロフ発緊急電を読んで



本の題名は戦争者で硬そうなイメージですが、読んで全く違う印象を受けました。
何より本の最後に載っている解説を読むまで誰が主人公で誰がヒロインかわかっていませんでした。

物語の舞台は第二次世界大戦真珠湾攻撃の前から攻撃後まで。
エピローグは戦争終結後、択捉がソ連の支配下になり住民が本土に渡るまでです。

取り敢えず戦争ものっぽかったのと、日本軍の描写が読みにくかった(漢字多く表現語が難しい)のと、主人公とヒロインの時系列が長く、2人が出会うのは本の佳境に入ってからなので、印象としては駆け足状態の本だなって思いました。

主人公はアメリカ軍に日本へのスパイとして送られる日系二世の元義勇軍の兵士。対してヒロインは父親がロシア人のハーフで、その外見から日本では生きづらい生活を送る駅逓の女主人。

その2人の出会うまでのエピソード、日本軍の動向、が時系列で綴られていきます。

面白いと感じたのは、主人公とヒロインの思考は書いてあっても、思いは書かれていないというと。なんかこの書き方はうまい!って思ってしまいました。

日本軍の登場人物たちは結構簡素というか、なんとなく軍人臭さが出ておりこれもうまいなって正直思いました。

スパイ活動を支援する牧師、行動を共にする朝鮮人、ふとしたきっかけで関わる人々。
どのひとも一様に味があり、とても丁寧に書かれていて感服しました。

これくらいの文章能力にこそなんとか賞をあげるべきなのではないのかなっと思うんですがね。

実際読んで2人がどうなったかを見て欲しいと思える作品でした。


4101223122エトロフ発緊急電 (新潮文庫)
佐々木 譲
新潮社 1994-01-28



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